2021

第7回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:1月20日(水)17:00~19:00
会場:オンライン
「宇宙の人文社会科学の広がり:人類学・倫理学・科学技術社会論を中心に」
・磯部 洋明 氏(京都市立芸術大学・准教授)発表スライドはこちら
講演概要:宇宙に関連した人文社会科学には,伝統的には宇宙法や宇宙政策といった分野があるが,近年は文化人類学,倫理学,科学技術者社会論といった分野にも広がりを見せている.本講演では発表者が京都大学宇宙総合学研究ユニットで関わったものを中心に宇宙に関する人文社会科学の研究動向を紹介する.その際,強調しておきたいのは,宇宙の人文社会科学が真に学術的な意義を持つためには,それが人類の宇宙進出を正当化・サポートするためのものであってはならず,場合によってはそれに異を唱える存在であるべきだということである.一方で,宇宙は,人間とは,社会とはどのようなものかということにその根元的な問いを持つ人文社会科学そのものにとって,新たな視点や論点をもたらす興味深いフィールドとなっている.講演ではこの「宇宙をフィールドにした人文社会科学」についてもいくつかの論点を紹介したい.

第6回勉強会アンケート結果

WG活動報告

参加者動向(第1~6回)

第8回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年2月22日(月)17:00-19:00
会場:オンライン
1.「建設コンサルタントが考える 月面都市構築に向けて」
・松嶋 健太 氏(株式会社建設技術研究所 地球環境センター)関連論文はこちら
講演概要:土木設計や都市計画を行う建設コンサルタントの視点で,主に,立地,月面都市計画,社会構築の視点から月面基地建設から月面都市への発展を考えた結果をご報告します.

2.「高頻度宇宙輸送の実現にむけて」
・坂本 勇樹 氏(宇宙科学研究所・日本ロケット協会)
講演概要:高頻度かつ大量の宇宙輸送の実現には抜本的な輸送コストの削減が重要な課題です.本講演では将来の地球-月-火星の輸送をテーマに検討状況をご報告します.

第7回勉強会アンケート結果

第9回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年3月26日(金)17:00-19:15
会場:オンライン
「協働組織としての月面の社会運営のあり方」
・永井 希依彦 氏(デロイトトーマツ) 発表スライドはこちら
講演概要:近年具体的な進歩が続々と発表されている有人月面探査計画「アルテミス」及び月周回有人拠点「ゲートウェイ」の先には「ムーンビレッジ」として人類生活圏が月面に展開されることが期待されている.60年超の宇宙開発の歴史において,その開発主体・目的は一様ではなく,時代ごとに変遷がみられたわけだが,「ムーンビレッジ」時代は新たな様相を加えることになるのは間違いない.本講では,宇宙開発の各段階における主体・目的を前提としたときに,そこで活動する集団のあるべき組織経営のあり姿を整理したい.その上で「ムーンビレッジ」を延長線上に見据えた場合に,求められる組織経営について議論を試みる.

「月面上の国際有人拠点における活動ルール~ISSからのアナロジー~」
・佐藤 雅彦 氏(JAXA) 発表スライドはこちら
講演概要:ISSは国際パートナーが提供する与圧モジュール等で構成される有人コンプレックス(複合設備)であり,その運営は15か国の政府間協定を柱とする国際ルールに基づいて行われている.地球低軌道上を周回するこのISSを,例えばそのまま月面上に移設してみると(もちろん観念上の話として.),ISSに適用される国際ルールが月面上の国際有人拠点でどの程度適用するか,足りないルールは何かなども見えてくるはずである.このようなケース・スタディを通じ,来るべき「ムーンビレッジ」時代の法秩序の在り方を考察する.

第8回勉強会アンケート結果

第10回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年4月23日(金) 17:00-19:00
会場:オンライン
「月面居住施設建設と3Dプリント技術」
・鶴巻 崇 氏(ヘザウィックススタジオ アソシエイト・シニアデザイナー)発表スライドはこちら
講演概要:
・自己紹介(過去に関わった建築プロジェクト):フォスター事務所などにおける英国での設計活動を通して,世界の多くのビッグプロジェクトに携わる.これまでに関わったプロジェクトに「シェイク・ザイード国立博物館」「アップル・パーク」「垂直公園(ヴェッセル)」「ガーデン・ブリッジ」「虎ノ門・麻布台プロジェクト」などがある.
・建築家の責務
・地球建築と月面建築に対する性能要求の違い
・ESAの3Dプリント月面居住施設(建設の流れと詳細)
・3Dプリント技術の概要と将来の可能性

「ムーンビレッジ勉強会/リファレンスモデル(ビジネス分科会)中間報告」
内田 敦 氏(三菱総合研究所)/朝妻 太郎 氏(フロンティアビジネス研究会資源WG)
・ムーンビレッジ勉強会では、リファレンスモデルと呼ばれるモデルを構築し,思考実験を行うことが推進されている.リファレンスモデルの構築にあたっては,アーキテクチャ分科会,人文・社会分科会,社会科学分科会,そしてビジネス分科会といくつかの分科会に分かれて検討を行っている.本講演では,リファレンスモデルのうち,ビジネスモデル分科会での検討の進捗,検討結果をご紹介するとともに,水資源市場および観光市場の市場規模の概算試算結果を基に,想定される月社会でのビジネスの姿について皆さまと議論したい.

3)第9回勉強会アンケート結果 等

第11回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年5月26日(水)17:00-19:00
会場:オンライン
「Progress Toward the Moon Village: A Reference Architecture for the First Lunar Settlement by 2045」
John C. Mankins 氏(Moon Village Association)
講演概要:During 2020-2021, the Moon Village Association (MVA) Architecture Working Group is conducting a “case study” that is defining a reference architecture for the first lunar settlement – to be realizes by 2045. The study is addressing requirements for a settlement, siting options, and a preliminary definition of a settlement. During December 2020, an online workshop was held over three days that provided the opportunity for researchers, and technologists around the world to present and characterization of key building blocks for a settlement (such as transportation systems) and the interactions among these building blocks. This presentation will review progress to day and provide some important highlights of the emerging Lunar Settlement 2045.

「月面居住施設建設と3Dプリント技術~フォローアップ~」
・鶴巻 崇 氏(ヘザウィックススタジオ アソシエイト・シニアデザイナー)発表スライドはこちら

第10回勉強会アンケート結果 等

第12回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年6月29日(火) 17:00-19:00
会場:オンライン
1.月・惑星社会 医学・ライフ分野検討G
泉 龍太郎氏(日本大学・教授発表スライドはこちら
講演概要:月
・惑星社会における医学・ライフサイエンス分野の課題への取り組みの考え方について現状を報告し,今後の進め方について議論したい.特に医学・ライフサイエンス分野は技術の進歩が速く,月惑星社会が実現すると想定される50~100年後の姿を見据えて,検討を行う必要がある.人類の宇宙進出にとっては,①宇宙放射線,②無・低重力対策(特に筋骨格系),③精神心理の3点が大きな課題であるが,月面開発の場合は,これに④月面ダスト(=レゴリス)対策が加わる.さらに,医学的な課題のみならず,人類進化の観点からの議論も提起したい.

2.「深宇宙ミッションにおける宇宙放射線防護の課題」
保田 浩志 氏(広島大学・教授)発表スライドはこちら
講演概要:月や火星などへの深宇宙ミッションにおいて最大の懸案の一つが,宇宙放射線,特に高エネルギー太陽フレア粒子による被ばくである.地球の磁気圏外で巨大な太陽フレアに遭遇すると,急性の健康障害が生じてミッションの遂行に支障をきたす恐れがある.その被ばくのリスクや線量低減のための課題について概観する.

3.「21世紀における宇宙での運動とリハビリテーション」
山田 深 氏(杏林大学)
講演概要:長期宇宙滞在ミッションにおいては,  低重力環境での運動と,  地球に帰還後のリハビリテーションが不可欠である.運動機器と運動プロトコールの開発と運用について,  国際宇宙ステーションでの20年間の歴史を振り返りつつ,  月や火星での滞在を見据えたこれからの50年+αを展望し,  乗り越えるべき課題とその解決へ向けた方略を探る.

他分科会からライフ分科会への期待,要望

第11回勉強会アンケート結果 

第13回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年7月28日(水) 17:00-19:00
会場:オンライン
1)話題提供
稲谷 芳文 氏+アーキテキクチャWG
この討論会のキーノートとして,現在の輸送アーキテクチャから出発して,1,000人の社会,年間1万人のツーリストに必要な輸送体系とはどのようなものかを考えるような話題を提供する.

2)「月社会の運営のための輸送システム討論会」(パネルディスカッション)討論会当日の内容はこちら
パネラー:佐々木 宏 氏(JAXA),油井亀美也氏 (JAXA),辻田大輔氏 (MHI),内田敦氏 (MRI),朝妻太郎氏 (ispace)
ムーンビレッジ勉強会では,月一回の勉強会開催で,月に社会を作るための工学技術の話題にとどまらず,ビジネス,社会科学,人文科学的側面など広い範囲の課題について議論してきました.今回の企画では,新たな試みとして,月に構築する社会を支えるためのシステムや輸送アーキテクチャについて考えるための討論会としたいと思います.
ISS/Artemisで達成あるいは実現を目指している現在および近未来の宇宙輸送体系から,本勉強会で議論している月社会のリファレンスモデルで議論するような,極めて大規模なサプライチェインや水資源の利用や観光などを含めた人の移動を担うための輸送体系は如何なるものでどうやって現在の輸送からこれに向けて発展させるか,またそのために必要なことはなにか,などについて議論するマテリアルを提供し,その上で登壇者=パネラーのいろんな経験や今やっていることと合わせて,面白い議論ができたらよいと思います.
話題提供:稲谷芳文氏+アーキテキクチャ輸送組:
この討論会のキーノートとして,現在の輸送アーキテクチャから出発して,1,000人の社会,年間1万人のツーリストに必要な輸送体系とはどのようなものかを考えるような話題を提供する.

第14回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年9月8日(水)17:00~19:00 予定
会場:オンライン
1)ムーンビレッジ勉強会リファレンスモデル検討WG中間報告
・アーキテクチャWG 坂本 勇樹 氏
・社会科学WG 北村 尚弘 氏
・ビジネスWG 内田 敦氏
・人文科学WG 岡田 浩樹 氏
ライフサイエンスWG 泉 龍太郎 氏

2)第13回勉強会アンケート結果 等

第15回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年10月7日(木)17:00~19:00 予定
会場:オンライン
持続的有人滞在の時代の月面における科学観測
大規模な国際協力により推進される月面における科学プロジェクトは,本格的な宇宙進出の一つのマイルストーンとしての位置づけとして相応しい目標である.
科学研究自体は,それ自身が資金的な価値を直接的に生み出すものでは無いが,国際的な研究者からの強い圧力は,月面拠点の開発に大きなドライビングフォースを与えるものであろう.
月面における科学観測としては,大きく分けて月面からの宇宙観測,そして月自身を科学対象とした研究の両方が考えられる.今回の勉強会では,これらの二つの観点から,本格的な科学観測に関する話題を予定している.現在の月周回機や単一の着陸機による科学観測やアルテミス計画を超えて,月面における有人活動の拠点が整備され,月の社会を考え始めるほどの持続的有人活動が行われる状況では,月面におけるサイエンスの内容・目的・実行方法やその規模も,大きく変わるであろう.その時代には民間による事業が拡大している事が想定されるが,それらを牽引するための国の投資を科学が担う,と言う側面もあるだろう.

1.月面からの重力波観測
上野 宗孝 氏 (JAXA・宇宙探査イノベーションハブ)
講演概要:月面からの宇宙の観測には様々な可能性があるが,その中でも月面環境の大きな優位性を活かした観測としては,重力波の干渉計が考えられる.重力波の観測は,日本のKAGRA計画等の地上の光干渉計による観測が推進されており,LIGOによる観測では 2017年にノーベル物理学賞が授与されている.地上観測に加えて軌道上での観測も推進されている(ESA, LISA計画など).地上・軌道上それぞれの手法ごとに観測対象に対する特質があり,両者の苦手な観測領域が存在し,その観測領域に大質量ブラックホールの成因において重要な意味を持つ,中質量ブラックホールの合体に対する観測が含まれている.この領域の観測においては,月面における光干渉計に大きなアドバンテージがあることから,月面における重力波干渉計についての紹介を行う.

2.月内部構造解明に向けた観測
川村 太一 氏  (Institut de Physique du Globe de Paris(パリ地球物理研究所))
講演概要:月の物理探査,特にその内部構造とプロセスは,アポロ計画の時点から現在に至るまで,科学的に高い優先順位を持つものとして認識されてきた.アポロ計画が設置した観測機器による観測は,月形成プロセスの理解を深めることに大きな成功を収めており,現在でも月の表面下に関する知識の大部分を占めている.しかし当時使用されていた観測機器の技術の限界,アポロ着陸地点の地理的な限定性から,月の内部構造を解明するには情報が十分では無い状況が続いている.月面の拠点開発に合わせ,月表面上に観測ステーション/観測ネットワークを整備する事により,本格的な内部構造の解明に向けた観測を進める事ができ,内部構造・形成プロセスの理解に向けた研究,しいては地球・月系の形成の謎に最終的な結論を与える事を目指すことが可能である.

3. 第14回勉強会アンケート結果

第16回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年11月8日(月)17:00~19:00 予定
会場:オンライン
1.「京都大学有人宇宙学研究センターの活動」
山敷 庸亮 氏(領域長)総合生存学館
講演概要:京都大学SIC有人宇宙学研究センターでは宇宙への人類の進出やハビタビリティをテーマとして,人類が他の天体で宇宙社会を構築する際に考えてゆかねばならない学問体系の構築を目指し、惑星居住,宇宙生命,宇宙医療,宇宙森林,宇宙海洋,惑星科学,など広範囲の研究を統合して新しい学問体系を構築することを目指した活動を展開しています.月や火星の持続的滞在を目標とし、さらにそれらの知見をもとに地球における人類の持続的発展にもつながるための開発哲学と目標の設定を定めています。特に大きな着眼点は、今まで宇宙での「生存基盤」の整備のみを構想してきた宇宙開発に「地球生態系」をどれだけ持参すべきかどうか?という点を根本的に掘り下げることを大きな目標とし、地球生態系を「コアバイオーム複合体」と解釈し、月・火星にはそれらを選定した「選定コアバイオーム」を持参し、それらをベースに宇宙での生存基盤と社会構築を構想しています。同テーマをもとに、科研費・学術変革領域研究への応募をはじめ協賛企業との共同研究を立ち上げています。この研究活動は月に限定したものではありませんが,「月における社会の構築」という本勉強会との接点を探ることや,双方の議論やexchangeをより深めることを意図して,研究活動全般の現状を紹介します.

2. 「宇宙で魚を食す-宇宙養殖のはなし」
遠藤 雅人 氏(東京海洋大学・准教授)
講演概要:宇宙居住における食料生産は古くから研究が行われており,陸上植物の栽培を中心に様々な食料生産が提案されてきた.一方,宇宙での脊椎動物実験には黎明期から魚類が用いられ,繁殖も含めた多くの成果を残してきた.これらの背景から我々は宇宙居住時の食料生産,特に動物性タンパク質および脂質の供給源に魚類養殖が利用可能であるかの検証を,食用魚のティラピアを養殖対象種として続けてきた.まず一つ目は物質フローが制御された水圏生態系を創出し,その中で養殖を行う研究である.もう一つは異なる重力下で魚類をはじめとする水生生物がどのような応答を示すのか,特に低重力や微小重力下で物質循環型養殖に用いる生物が飼育可能な条件はどのようなものなのかについての検証である.今回はこれらの研究成果を紹介し,宇宙養殖の可能性について探る.

3. 第15回勉強会アンケート結果

第17回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年12月8日(水)17:00~19:00
会場:オンライン
月でのエネルギ供給は様々な課題がありますが,現在,地上の脱化石燃料や環境対応の文脈で行われている「水素エネルギ社会の構築」や「太陽発電衛星の研究」でご活躍の神谷さんと篠原先生に,これらの地上のエネルギ問題の解決のための技術の発展として,月での水資源からの推進剤やエネルギ供給およびエネルギ伝送などの話題への応用について議論していただきます.

1.「地上の水素サプライチェーン構築活動と,月面における水素エネルギー供給構想について」
神谷 祥二氏(川崎重工)
講演概要:現在,日本では,水素利用において世界をリードしていくため国を挙げての取り組みを行っています.国際水素サプライチェーンの構築と水素発電をによる水素の大量消費を2030年頃に商用化すべく,必要な研究開発を推進しています.本講演では,まず,これら地球上における水素プロジェクトの意義と現在の状況を紹介し,月面において水素を製造し推進剤やエネルギーキャリアとして利用する構想について検討した結果を紹介し,月社会構築リファレンスモデルへの適用について議論します.

2.「宇宙太陽発電の研究開発現状と月への技術応用」
篠原 真毅氏(京都大)
講演概要:宇宙太陽発電は第1期宇宙基本計画に取り上げられて以降,日本では研究開発が加速されました.近年は米中を中心に大規模なプロジェクトも立ち上がり,世界中で研究開発が進展しています.本講演では宇宙太陽発電の世界の研究開発現状をまとめるとともに,ワイヤレス給電技術の応用を中心とした月でのエネルギー技術の提案について話題提供をします.

3. 第16回勉強会アンケート結果