2020

第1回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2020年7月31日(金)17時~19時
会場:オンライン
「ムーンビレッジと勉強会のゴール設定」
・稲谷 芳文 氏(JAXA参与) 発表スライドはこちら
講演概要:
月惑星や地球外の宇宙空間に,社会とも言える規模の持続的な人類の活動を展開するときに考えておくべきことは極めて多岐にわたる.地球と異なる環境での生活や経済活動を維持することや,移住や世代交代などということまでを含む人類の活動を持続的に行うためには,現在までの宇宙開発で獲得した手法や考え方とは異なる概念でのシステム構築や人文科学および社会科学的な考察が必要であろう.ISSや有人月探査など我々が現在取り組んでいる営みの次の展開として,まずは月面上での持続的有人活動から社会の構築という具体的な例題について,様々な側面から考えておくことは有意義であろう.これらの多様な課題の抽出とこれらについて議論するためのプラットフォームとしての本勉強会の目的や,リファレンスモデルの構築による思考実験の提案など,勉強会の活動の方向性について議論するマテリアルを提供する.

第2回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2020年8月27日(木)17時~19時
会場:オンライン
1.「惑星居住を指向した資源・エネルギー開発」
・後藤 琢也 氏(同志社大学・教授)発表スライドはこちら
講演概要:
現在の宇宙探査・利用に使われているすべてのものは,地球にある物質で製造されている.一方,今後の宇宙での有人活動さらには居住を目指したとき,「宇宙での地産地消」を理念として,「宇宙におけるその場資源エネルギー利用in-situ resource utilization 
(ISRU)」が必要となる.今回は、月面表層に豊富に存在するレゴリスの資源としての可能性について、月レゴリスシミュラントを用いて筆者らが行ってきた研究結果の紹介および,最近の国際的な動向についても紹介する.
2.「宇宙に「社会」をつくる(制作する)こと-文化人類学の視点から」
・岡田 浩樹 氏(神戸大学・教授)発表スライドはこちら
講演概要:

本報告ではまず宇宙での社会のイメージの想像力の実態と問題点を指摘した上で民族誌的資料から既存の人類「社会」の多様性を示したい.次に合理的な因果関係説明可能性が重視される科学技術的アプローチだけでは社会・文化を設計することにはいくつかの問題点があることを検討したい.そして最期に科学・技術と社会・文化の領域を複合的に捉える方法として近年文化人類学などで注目を集めているアクターネットワーク理論を紹介する.

第1回アンケート結果

リファレンスモデル資料

第3回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2020年9月11日(金)17時~19時
会場:オンライン
SDGsが拓く宇宙ビジネス」―宇宙開発の人類にとっての意義を考えるー
・黒須 聡 氏(横河電機)発表発表スライドはこちら
講演概要:

Sustainable Development Goals (SDGs:持続可能な開発目標)」は,「誰ひとり取り残さない」を理念とし,2015年に国際連合で採択された人類共通の目標である.このSDGsの世界の最新動向を,講師が理事を務めるWBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための世界経済人会議)等の国際機関の活動を交え紹介する.そして,SDGsをビジネスチャンスととらえ活躍する民間企業の例を参照しながら,SDGsに宇宙がどう貢献すべきかを考察する.

第2回アンケート結果

第4回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:10月5日(月) 17時~19時
会場:オンライン
「宇宙に暮らす」をデザインする
・宮嶋 宏行 氏(国際医療福祉大学医学部・教授)
講演概要:
宇宙建築という言葉があるように,宇宙惑星居住を建築の視点から提案する発表は多く見られるが,「宇宙に暮らす」という全体を定量的に評価し,設計する提案は少ない.本発表では,NASAの報告書やリファレンスモデル,米国での模擬居住実験参加経験を踏まえ,今までに設計した宇宙惑星居住施設(月・火星・宇宙空間に2人滞在から100万人の都市まで)の紹介とその設計手法について紹介する.これらの過去のプロジェクトでは,長期滞在における資源の再生と現地調達についてだけではなく,技術,経済,社会・文化・政治,美観など様々な側面から検討している.

第3回アンケート結果

リファレンスモデル資料(社会建設分野)
リファレンスモデル資料(社会科学分野
リファレンスモデル資料(ビジネス分野)
リファレンスモデル資料(人文科学分野)

第5回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:11月6日(金)17:00~19:00
会場:オンライン
講演タイトル:
1. 「宇宙への人類の取り組み」の過去現在未来―宇宙曼荼羅の世界
・柳川 孝二 氏(航空宇宙学会・宇宙人文社会科学研究会主査)
2. 「月の人間社会」建設に向けたひとつのシナリオと人文社会研究の課題について
・清水 順一郎 氏(元「宇宙の人間学」研究会・事務局長)
講演概要:
約10年前,ISS利用検討の一環で,今後の有人宇宙活動の多様な広がりを支えるための「宇宙の人文・社会科学研究が担う役割は何か」という課題が提起され,この課題にアプローチするために,①人類の宇宙進出の基本理念は何か,②地球を護るための知的基盤は何か,③「宇宙の人間社会」のガバナンスをどう構築するか,という具体的な命題が設定されて検討が進められた.
講演の前半では,概ね22世紀までの有人宇宙活動の取り組みの多様な姿を鳥瞰的に展望する目的で作成された「宇宙への人類の取り組み(宇宙曼陀羅図)」を用いつつ,検討で得られた成果の概要を紹介する.
講演の後半では,命題①に着目して,理念構築の基礎になり得る幾つかの考え方(「宇宙の人間学」として検討)を紹介するとともに,将来の「月の人間社会」を想定して,その建設のプロセスと人間社会の実現に必要な人文社会面の課題にアプローチするための糸口を紹介する.

第4回アンケート結果

第6回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:12月3日(木)17:00~19:00
会場:オンライン
講演タイトル:
1. 「宇宙たん白質工場の開発」
・二川 健 氏(徳島大学宇宙食品産業栄養学研究センター・センター長)
講演概要:
近年,欧米だけでなく日本でも有人の宇宙探査計画が発表されている.JAXAの場合,2030年頃を目処に有人月探査計画が発表した.NASAはさらにその上で火星での有人探査を目指している.そうなってくると宇宙活動のために最も必要となってくるのは「食」である.国際宇宙ステーションのような近距離の場合だと食材の補給が容易であるが,火星となると,その食材の栽培も必須となってくるだろう.映画「オデッセイ」をごらんになった方も多いと思うが,その映画では,火星に取り残された主人公が,ジャガイモを食べながらおおよそ2年間を生き抜き無事地球に戻ってくるというSFである.しかし,ジャガイモはほとんどが糖質であり,三大栄養素である脂質や蛋白質はほとんど含んでいないので,そんな食材だけで2年間過ごしたら,カロリー不足でほとんど動けなくなってしまうはずだ.このように宇宙の食で最も不足する栄養素はたん白質である.宇宙環境により生じる疾患に機能性を有するたん白質を効率良く量産するシステムを科学的に考案したい.
2.「宇宙放射線被曝線量実測~宇宙滞在者の見えない命綱~コロナ禍は疑似宇宙?」
・寺沢 和洋 氏(慶應義塾大学医学部・助教、JAXA有人宇宙技術部門・客員研究員)
講演概要:
宇宙滞在期間に制限を与える要素の1つが宇宙放射線による被曝である.定常的な被曝は,銀河宇宙線と(地球低軌道では)放射線帯からの粒子により受け、太陽フレア発生時には,加えて,突発的な被曝を受けることもありうる.前者の線量率は0.5~1 mSv/day程度で,地磁気圏外では1 mSv/dayを越えることも想定される.月や,特に火星への長期ミッションとなれば,銀河宇宙線のみの被曝でも,生涯被曝線量限度の~1 Svに達するか,超えることへの覚悟も必要である.後者の粒子については,銀河宇宙線の被曝の主たるエネルギー領域ほど高くはないため,シールドなしで直撃することがなければ被曝を低減できるが,そうではない場合,Svオーダーなることへの想定も必要である.これまでの日本発の実測例を中心に紹介し,放射線被曝の立場から,月面に村を作る上での必要と思われる事項についても少々言及し,皆様と共にどうすべきかを考察できればと考えている.

第5回アンケート結果