戦略計画

「日本マイクログラビティ応用学会における戦略計画」

平成18年3月
日本マイクログラビティ応用学会 戦略委員会

1. はじめに

我が国の微小重力科学実験は、1973年のスカイラブでの銀-炭化珪素-ウィスカー複合材料の製造実験にさかのぼり、それ以降スペースシャトル、小型ロケットなどによる本格的な宇宙実験を実施し、1973年代以降の宇宙環境利用の本格化を推進し、欧米と対等なパートナーとして国際的地位の獲得に貢献してきた。
日本マイクログラビティ応用学会(昭和58年設立)の当初の目標は、日本初の本格的な軌道上実験計画である第一次材料実験計画の立案・実施に科学界として協力し、よりよい成果の創出に貢献することであった。第一次材料実験計画立案・実施、さらにIML、STC、フリーフライヤー実験、MSLシャトル利用実験計画、小型ロケット実験の設定・立案・実施などにおいて、本学会の存在が広くアピールされ、実施研究者の殆どが学会構成員であるという強みを活かせるまでに成長してきた。さらに平成3年に発足したフロンティア共同研究推進の主体的な役割を担うとともに、小型ロケット実験の成功など多大な寄与を果たしてきた。
宇宙実験が技術開発指向から研究開発指向へ質的に成熟してきた今日、本学会が果たすべき役割は一層大きく、我が国の宇宙利用研究開発を取り巻く社会的な変化に対して的確に変革を遂げ、人的・知的財産を次代へ効率的に継承し、今後の我が国の宇宙利用の展開に資する取り組みを使命として推進する必要がある。
スペースシャトル・コロンビア号の事故を契機とした国際宇宙ステーション計画の遅れ、米国の有人探査を重視した姿勢への転換、我が国における宇宙3機関の統合など微小重力実験に関する情勢の変化は激しいものがある。この様な状況にあって、本計画は今後の学会活動の方向性、方法等を検討し、当面の指針を戦略計画として制定するものである。

2. 微小重力科学を取り巻く現状認識と課題

微小重力実験が軌道上で行われてから35年ほど経過した。この間微小重力利用の優位性を主張し、全体で数百件にも及ぶ微小重力実験が行われてきたが、実験実施のために費やした経費に見合う成果のアピールが弱く、宇宙に関わらない研究者にまで興味を喚起するまでには至ってない。そのような現状を打破する大きな役割を担うと期待された国際宇宙ステーション(ISS)は、2003年2月のスペースシャトル・コロンビア号の事故により建造が中断されており、我が国の実験モジュール「きぼう」(JEM)は当初2004年に打ち上げの予定であったが、2007年まで延期となっている。
このような状況において、研究者コミュニティを活性化し、本学会の存立基盤を強固なものにするためにも、宇宙実験機会の確保へ向けての取り組みは最も重要な課題である。今後長時間の微小重力実験機会のみならず落下塔や航空機等の短時間微小重力実験機会の充実を図っていく必要がある。そのためには学会が研究者の意見や要望をまとめて、我が国の宇宙機関への働きかけや協力を推進していくだけでなく、諸外国の宇宙機関への働きかけやDASあるいはMGLABなどの短時間微小重力実験を行ってくれる機関への協力なども強める必要がある。研究者間の情報交換・交流の場を広げ、初期の宇宙実験はじめフロンティア共同研究や地上公募研究で培った財産を次代へ繋げることも、重要な取り組みの一つである。本学会は微小重力に関する国内および国際会議の主催者あるいは共催者として、そのような場を積極的に提供していく。また、宇宙実験には科学と技術の融合が最も本質的であり、これらについての整理、提言など今後の宇宙実験計画立案に対する学会としての寄与は重要であり、宇宙実験を計画する研究者にとって魅力的な学会になるためにも、諸外国の取り組み状況をいち早く精査し国際協働の推進に向けて努力することが必要である。

3. 当面の目標

「宇宙実験機会の確保へ向けての取り組み」と「研究者間の情報交換・交流の場の拡大」を当面の主要な目標と位置付け、航空機などの短時間実験機会も含めて微小重力実験機会獲得や研究者コミュニティからの提案の実行性の向上を目指して、以下の戦略を設定する。

○研究者相互の出会いの場としての機能の強化
各種学術講演会を開催するとともに、ホームページや学会誌を通して研究者相互の交流や情報交換の場を提供し、研究者コミュニティの発展に貢献する。さらに、研究者コミュニティの発展に貢献する。さらに、研究者コミュニティあるいは個人に対するインセンティブな貢献として、JASMA賞(論文賞)を設定する。

○実験機会確保に向けての政策提言機能の強化
研究者の意見や要望をまとめて、我が国の宇宙機関への働きかけや協力を推進していくだけでなく、諸外国の宇宙機関への働きやDASあるい はMGLABなどの短時間微小重力実験を行ってくれる機関への協力を推進する。その一環として、様々な微小重力実験機会を探索し、優れた研究者コミュニティの研究開発に資する取り組みを始める。

○国際化への対応
優れた宇宙実験計画の立案や実験成果の取得のために不可欠である海外の宇宙実験経験者との情報交換・研究協力に積極的に取り組む。日中、日独、日加、日欧などの国際シンポジウムを積極的に開催する。

○未来への布石
優れた実験計画を提案した若手研究者に学会奨励賞を出すなどして未来を担う若手研究者を育成し、微小重力環境利用の推進を図る。若手研究者にインセンティブを付与し得る取り組みを充実させる。

○微小重力環境利用特有の科学・技術的課題への積極的な展開
宇宙実験の計画手法、微小重力実験手段の特徴、利用の方法、関連する実験技術の特徴等を発信し支援するとともに、宇宙実験の発表、評価、交流の場としての取り組みを強化する。

○宇宙科学分野など他の宇宙関係学会との連携の推進
宇宙科学分野など宇宙関連の他学会との連携・協力を進め、互いの切磋琢磨によりそれぞれの分野の進展を図る。微小重力科学を主たる対象にしつつも、より広く宇宙環境利用をとらえた活動を進める。

4.結論

本学会が設立されて20有余年が経過し、この間の微小重力環境利用研究を取り巻く情勢の変化は微小重力利用の意義等を含めて著しいものがあった。本戦略計画は未だ不完全ではあるが学会としてこれまでの情勢変化およびその中で得られた知的財産の重みを素直に受入れ、時代の要請と科学技術の展開の円滑な橋渡しと成るべく作成したつもりである。微小重力環境利用に関する優れた実験企画立案・利用の中核的役割を担うためにも、学会活動の活性化を図り研究者コミュニティの裾野を広げることが、ひとえに本学会が担うべき使命であり、これを通じて未来の創造と人類の発展に寄与するものと確信している。

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