会長挨拶

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              「JASMAの役割」

           北海道大学 藤田 修

JASMA(日本マイクログラビティ応用学会, The Japan Society of Microgravity Application)は会員数200名程度の学会である。一方で、本会は微小重力の利用あるいは重力を変数とする科学を対象とする研究者・技術者コミュニティであり、国内外を見ても極めてユニークな学会といえる。学会会員数はそれほど多いとは言えないが、当該研究分野にとってなくてはならない組織である。

さて、ここで本学会がどのような役割を担い社会にどのように貢献していくかを考えてみたい。学会の一般的役割を考えると、(1)学術の発展、(2)人材の育成、(3)交流の場の提供、が挙げられる。本会がユニークな領域を対象としているとは言っても、他の学会と同様にこれらの役割を担っていることは確かである。

まず、(1)学術の発展については学会としての最も基本的な役割であり、この機能を持たないものは学術団体としての学会とは言えない。本会の事業としては、JASMAC(JASMA Conference)の開催、隔年で開催されるAMS (Asian Microgravity Symposium) やISPS (International Symposium on Physical Sciences in Space) への協力などがある。これらの場で活発かつ実りのある議論を促進していくことが大きな役割である。また、本会が発行する国際学術誌IJMSA(International Journal of Microgravity Science and Application)は研究者の貴重な科学的成果を次世代に引き継ぎ、微小重力科学のさらなる発展の礎となることが期待される。このためにIJMSAへ優れた論文を集め、本会をとおしてその成果を発信していただくことが重要である。現在その一助となるようIJMSA誌としてIF(Impact Factor)を獲得することに学会として取り組んでいる。IJMSAはIFが付与される1段階前のESCIというステータスになっており、掲載された論文はWeb of ScienceでのCitation集計の対象となっている。IFの付与は、IJMSAへの論文投稿者や本会会員への大きなサービスになるだけでなく、本誌が微小重力科学の成果公表の国際的プラットフォームを担うことになり、学会の目的である学術の発展への寄与は大きいと考えている。

(2)人材育成の場としての役割については、宇宙飛行士の毛利衛先生のご支援をいただき、毛利ポスターセッションを継続してきた。学生を対象とし、優れたポスター発表を毛利先生が直接表彰されるというもので、正に本会の象徴的な事業となっている。この事業がどれほど微小重力科学を志す学生を励まし、研究の動機付けなってきたか、その影響は計り知れない。また、学会表彰事業(論文賞、奨励賞等)も微小重力科学分野で活躍する研究者を活性化する上で重要な役割を担ってきた。しかし、人材育成に関しては、本会としてまだ事業内容の検討の余地があると考えており、例えば表彰事業のさらなる充実、微小重力環境利用研究の教育コンテンツとして価値を人材育成へ活用する方策など、今後さらに継続して検討を進めてゆきたい。

(3)交流の場としての役割は、学術団体であるが故の極めて重要な機能である。学術が第1の目的であるが故に種々の組織の人材が自由に参加することができる。学術の推進に対し、参加者の出身母体は全く関係ないのである。一方で、新しい事業やプロジェクトを始めるには複数の人間が関わる必要があり、その基本はそこに参加する人間どうしの信頼関係である。その意味で、直接異なる組織の人材がふれあう機会はこの上なく重要である。これを提供できるのが学会である。したがって講演会の懇親会や学会の種々の委員会活動を通した人的つながりを作る場の提供は学会の本質的役割である。また、交流には国の内外や微小重力実験を提供する側と利用する側など、種々の組み合わせがある。このような交流を実現する場としてJASMACやそれに付随する懇親会であるが、それ以外にもAMSやISPSなどの国際会議への積極的な関与が現在実施している内容である。さらに本年度からは研究分科会活動支援事業を立ち上げており、微小重力科学の中で興味の対象を絞り込んだ新たなコミュニティ形成活動や、新規研究プロジェクト立ち上げを支援する試みを開始している。

微小重力利用に関してはISSの2024年以降の運用継続が不透明であることや国内の大型落下塔が次々と閉鎖するなど、必ずしも明るい見通しがあるわけではない。しかし、このような社会情勢とは無関係に重力は確かに存在しており、微小重力に関わる科学も消えることはない。NASAは月面から火星への有人活動の展開を標榜しており、中国も有人宇宙活動を積極的に推進する姿勢を見せている。このような中、有人活動に必要な微小重力科学は国際的に改めて脚光を浴びる可能性もある。このように、国策や社会情勢により微小重力科学への社会的注目の大きさは変動を繰り返すと考えられるが、本会は情勢の変動に関わりなく微小重力科学に関する議論の最高のプラットフォームとしその役割を担い、議論の中心を担う研究者や技術者の最大の味方となる学会でありたいと考えている。

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