第15回 月惑星に社会を作るための勉強会

日時:2021年10月7日(水)17:00~19:00 予定
会場:オンライン

参加方法はこちらから (申込締切:10月6日(水)17:00

持続的有人滞在の時代の月面における科学観測

大規模な国際協力により推進される月面における科学プロジェクトは,本格的な宇宙進出の一つのマイルストーンとしての位置づけとして相応しい目標である.

科学研究自体は,それ自身が資金的な価値を直接的に生み出すものでは無いが,国際的な研究者からの強い圧力は,月面拠点の開発に大きなドライビングフォースを与えるものであろう.

月面における科学観測としては,大きく分けて月面からの宇宙観測,そして月自身を科学対象とした研究の両方が考えられる.今回の勉強会では,これらの二つの観点から,本格的な科学観測に関する話題を予定している.現在の月周回機や単一の着陸機による科学観測やアルテミス計画を超えて,月面における有人活動の拠点が整備され,月の社会を考え始めるほどの持続的有人活動が行われる状況では,月面におけるサイエンスの内容・目的・実行方法やその規模も,大きく変わるであろう.その時代には民間による事業が拡大している事が想定されるが,それらを牽引するための国の投資を科学が担う,と言う側面もあるだろう.

1.月面からの重力波観測
話題提供:上野宗孝 (JAXA・宇宙探査イノベーションハブ)

月面からの宇宙の観測には様々な可能性があるが,その中でも月面環境の大きな優位性を活かした観測としては,重力波の干渉計が考えられる.重力波の観測は,日本のKAGRA計画等の地上の光干渉計による観測が推進されており,LIGOによる観測では 2017年にノーベル物理学賞が授与されている.地上観測に加えて軌道上での観測も推進されている(ESA, LISA計画など).地上・軌道上それぞれの手法ごとに観測対象に対する特質があり,両者の苦手な観測領域が存在し,その観測領域に大質量ブラックホールの成因において重要な意味を持つ,中質量ブラックホールの合体に対する観測が含まれている.この領域の観測においては,月面における光干渉計に大きなアドバンテージがあることから,月面における重力波干渉計についての紹介を行う.

2.月内部構造解明に向けた観測
話題提供:川村太一 (Institut de Physique du Globe de Paris(パリ地球物理研究所))

月の物理探査,特にその内部構造とプロセスは,アポロ計画の時点から現在に至るまで,科学的に高い優先順位を持つものとして認識されてきた.アポロ計画が設置した観測機器による観測は,月形成プロセスの理解を深めることに大きな成功を収めており,現在でも月の表面下に関する知識の大部分を占めている.しかし当時使用されていた観測機器の技術の限界,アポロ着陸地点の地理的な限定性から,月の内部構造を解明するには情報が十分では無い状況が続いている.月面の拠点開発に合わせ,月表面上に観測ステーション/観測ネットワークを整備する事により,本格的な内部構造の解明に向けた観測を進める事ができ,内部構造・形成プロセスの理解に向けた研究,しいては地球・月系の形成の謎に最終的な結論を与える事を目指すことが可能である.

3. 第14回勉強会アンケート結果 等

※月惑星に社会を作るための勉強会(ムーンビレッジ勉強会)ウェブサイト

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