2023

第27回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2023年1月23日(月)17:00-19:00 開催
会場:オンライン
「アルテミス計画の現状と今後について」
佐々木 宏 氏 (JAXA理事・有人宇宙技術部門長)発表スライドはこちら
講演概要:ISSの次の国際共同計画として進行中の月から火星への有人活動の展開を視野に入れて有人月探査から持続的滞在を目指す計画が進められています.本勉強会としても計画がどのようになっていくのか関心のあるところです.今回はこの計画への日本の参加や貢献を進める役を務めておられる佐々木宏さんをお招きし,計画の現状と日本の参加やJAXAの果たす役割などについてご紹介いただくと同時に,本勉強会に参加されているコミュニティのみなさんとの意見交換,さらには将来計画に向けたビジョンや,勉強会への期待などについても,佐々木さんとやりとりをしたいと思います.

第28回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2023年4月11日(火) 17:00-18:00
場所:オンライン
「宇宙放射線の線量評価や被ばくリスク低減に関する取り組み」
小平 聡 氏(量研・量子生命・医学部門 放射線医学研究所 グループリーダー)発表スライドはこちら
講演概要:宇宙において安全に有人活動を行うためには,宇宙放射線による被ばくリスクを理解し,被ばく線量の実測とともに遮へいによる可能な限りの被ばく線量の低減が求められる.深宇宙への展開においては,宇宙滞在が長期化や,地球磁気圏外では重粒子線の線量寄与が大きくなるなど,現在の地球低軌道での活動とは異なる特徴がある.宇宙放射線による被ばくの観点からは,線量評価の方法と遮へいによる被ばくリスク低減化に課題があると考えられる.本発表では,宇宙放射線の線量評価や被ばくリスク低減に関する私たちの取り組みについて紹介する.

第29回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2023年4月25日(火) 17:00-18:00
場所:オンライン
「宇宙人類学:銀河系恒星間航行における人類の進化および存続に必要な宇宙船搭乗員数」
佐野 智 氏(JAXA※)発表スライドはこちら
講演概要:NASAやJAXAでは月や火星などにおける有人宇宙探査が検討され,世界の様々な研究機関・大学では,銀河系内の恒星間航行の研究もなされています.このように人類の活動領域の更なる拡大が想定される中,本話題提供では,恒星間航行における人類の進化,および存続に必要な宇宙船搭乗員数について遺伝学的および文化的観点から行った研究成果を紹介いたします.
※本話題は,JAXA業務外で東京大学で得た知見によりなされた研究(博士論文)の紹介です.

第30回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2023年5月31日(水) 17:00-18:00
場所:オンライン
「宇宙大航海時代・・宇宙進出への羅針盤」
川崎一義 氏 JAXA経営企画部長(元副探査ハブ長)
講演概要:昨年12月にJAXAから出版した『宇宙大航海時代・・「発見の時代」に探る、宇宙探査への羅針盤』の概要についてお話します.本著は,人類の宇宙進出の意義や価値を15世紀の大航海時代(発見の時代)から見出そうとJAXA宇宙探査イノベーションハブで実施した歴史学者との共同研究の結果をまとめたものです.この本を端緒として,宇宙探査には宇宙だけでなく,現代の人類が抱える様々な課題についても向き合っておく必要がある,ということについてお話ししたいと思います.

第31回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2023年6月26日(月) 17:00-18:00
会場:日本橋三井タワー7階 X-Nihonbashi Tower
袴田武史 氏(ispace Founder & CEO)
「月面輸送ビジネスとCiSLunar経済圏の創出」
講演概要:民間主導による月での宇宙活動の先駆けとして,月への輸送サービスから月での有人活動の拡大と経済活動への発展などを目指して,ispace社のファウンダー・CEOとして活動.世界で初の民間による月着陸の試みの実行から,定常的な輸送サービスの実現を通じて,10年20年の時間スケールで,月における経済活動に発展させるべく,世界に先駆けて日本の民間宇宙活動のスタートアップのリーダとして活躍中.

第32回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2023年7月28日(金)17:00-18:00
会場:オンライン
「鳥取砂丘を舞台にした月面模擬研究:大学と民間の活動紹介」
辻本 壽 氏(鳥取大学乾燥地研究センター長),田中 克明 氏(株式会社amulapo),三浦 政司 氏(JAXA宇宙科学研究所)
概要:鳥取砂丘を舞台にアジア最大の月面開発拠点構築を目指した取り組みが進められている.本勉強会では,鳥取大学を中心とした乾燥地研究についての紹介,鳥取県や鳥取大学と連携した月面模擬実証フィールドの状況や月面上での移動体の挙動を推定する取組みの紹介,その他衛星データ等のデジタル技術を活用した,デジタルツイン,アナログツインの考え方や利用事例を紹介します.

第33回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2023年8月31日(木)17:00-18:00
会場:オンライン
「月面での水素の確保・利用に向けた技術課題整理」
市橋洋基氏(三菱総研)
講演概要:現在,月面において地球の資源に依存せず持続的な人類活動を行うためには,月面に存在する資源から生活資源を調達するISRU(In-Situ Resource Utilization,現地資源利用)が必要不可欠であると考えられている.ISRUの典型的な例の1つとして,月極域に一定量存在すると考えられている水氷から人類活動に必要な水素を生成し,燃料電池,ロケットの推薬等への適用が想定されている.MRIでは経産省プロジェクトの一環として,月面上で水素を生成する上で必要となる技術や必要となる施設配置を含む全体アーキテクチャのこれまで検討結果について紹介するものである.

第34回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2023年9月26日(火)17:00-18:00
会場:オンライン
「月面での電力の確保に向けた技術課題整理」
岡 範全 氏,山内健司 氏,伊地智幸一 氏(宇宙システム開発利用推進機構)
田中孝治 氏(宇宙科学研究所)
講演概要:人類の活動領域の宇宙への拡大の一環とし,火星やさらに遠方へ活動領域を広げる活動が開始されている.その第一歩として月面に人類が定住し,月面の水資源を探査し,水素と酸素を製造するという具体的な計画が動き始めている.その計画を実現するためにはまず電力供給を確保する必要がある.現在宇宙での最大規模の電力供給システムとして実現しているのは国際宇宙ステーション(ISS) であり,「有人宇宙船」としての約100kW程度の電力供給が行われている.月面での有人等による活動のための電力供給システム構築という観点では,より多人数の有人滞在対応,大電力化等の課題のみならず,月面の設置の太陽電池,月の周回軌道における発電と送電,月面間の送電等,月面の特性と制約を考慮した構成要素が必要となる.三菱総合研究所では経産省プロジェクトの一環として,電力WGにおいて月面上で水素を生成する設備を中心とした電力供給システムのアーキテクチャ,構成要素並びに解決すべき課題についての検討を令和3~4年度で実施して来ており,その概要について紹介する.

第35回 月惑星に社会を作るための勉強会
日時:2023年10月30日(月)17:00-18:00
会場:オンライン
アジェンダ
「月でリュウグウ野菜を作る?月での自給自足に向けて」
中村栄三 氏(岡山大学特任教授・名誉教授)(惑星物質研究所)
講演概要:近年,月の極域での水氷の存在の可能性が指摘され,水資源開発に向けた国際競争が顕著になっています.しかし,月における生命活動に必要な水素・炭素・窒素(HCN)の存在度が極めて低いことが分かっています.この課題に対する新たなアプローチとして,小惑星「リュウグウ」のようなHCNに富み,アミノ酸の可溶性の有機物を大量含む小惑星を,月面での資源として活用できる可能性が考えられます.この講演では,農学を専門としない地球宇宙化学者の物質科学的な視点から,モデルリュウグウ土を用いた植物栽培の可能性を示し,将来の月面における持続的有人活動と自給自足に向けた新たな議論の一部になればと期待します.