会長挨拶

大田 治彦(九州大学)
Haruhiko Ohta

すでに20年以上も前から急速に普及してきた微小重力環境利用各分野での実験に関しては、途中で航空機、スペースシャトル、大型落下施設などの有力な実験機会を得ながら、その最終的実験手段とも言えるISS(国際宇宙ステーション)での実験がすでに昨年より一部のテーマで実現するに至っております。この点におきまして、今はまさに本分野の新たなフェーズに到達したと言えます。さらに日本人宇宙飛行士のISS関連各種ミッションでの活躍や、これまで宇宙とはほとんど無縁であった町工場の人々の技術を結集させた衛星の打ち上げなどが大々的に報道されるに至り、まさに国民の大きな夢と関心が宇宙に向けられていると言って過言ではありません。

しかし当初は比較的多くあった微小重力の実験機会が近年ではかなり限定したものに縮小されてきており、残念ながら微小重力実験に携る各分野の研究者の要求とは大きくかけ離れた状況となっております。付随する理由は種々あると思われますが、やはり根本的が原因は、一般国民を含めた専門外の方々からは、微小重力実験の成果が概してわかりにくく、またその波及効果も判然としないと見なされていることによるものと思われます。

このような状況の中、昨年8月には宇宙基本法が施行され、その後政府の宇宙開発戦略本部により、これから策定される宇宙基本計画の基本的な方向性の内容として、(1)国民生活の向上、(2)安全保障の強化、(3)宇宙外交の推進、(4)戦略的産業の育成、(5)宇宙科学研究の推進、の5項目が挙げられ、従来の宇宙技術開発から宇宙利用重視へと方向転換を行うことが示されております。これは日本の宇宙開発を国家戦略として、国や地方自治体、民間が機能的に連携して取り組むものであり、かなり特殊な領域にあった宇宙開発を広く一般化することにより強力に推進し、宇宙利用を国民生活や経済活動に積極的に役立てることを目的としています。

以上のような宇宙環境利用分野を取り巻くいわば外郭部分が大きな変化を遂げんとする中で、上記項目の中のごく一部にしか関連づけられない従来の研究範囲を各研究者が固持するとすれば、おそらく本分野は縮小を余儀なくされるものと思われます。従来どおり科学的価値を重視する方針を採りながらも、上記の方向性を十分に認識したテーマの見直しや創設と、成果反映の確固としたシナリオを練って、宇宙環境利用分野の新たな展開を繰り広げんとする、今はまさにそのスタート地点に立っているものと確信する次第です。

今回、会長という大役を仰せつかり大きな責任を感じております。本学会のさらなる発展のために尽力いたす所存ですので皆様方の御支援と御協力をお願い申し上げます。

(平成21年4月)

 

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